NATO(ナトー)
北大西洋条約機構(きたたいせいようじょうやくきこう)は、北大西洋条約に基づき、アメリカ合衆国を中心とした北アメリカ(=アメリカとカナダ)およびヨーロッパ諸国によって結成された軍事同盟である。30か国が加盟し、非加盟のスウェーデン、フィンランドや日本などとも協力関係にある。前身はブリュッセル条約 (1948年)。ベルギー首都ブリュッセルに本部を置く。
略称は頭字語が用いられ、英語圏では、North Atlantic Treaty Organization を略した NATO(ネイトー)と呼ばれ、日本やドイツ語圏では NATO(ナトー)、フランス語圏(Organisation du Traité de l'Atlantique Nord)・スペイン語圏・ポルトガル語圏(西:Organización del Tratado del Atlántico Norte、葡:Organização do Tratado do Atlântico Norte)等では OTAN(オタン)と呼ばれる。
冷戦時代には、かつての「列強」であった日米欧の三極が西側陣営の主軸を構成していた。日米や欧米の関係が緊密なものだったのに比べ、地理的・歴史的な要因もあって日欧の連携は比較的疎遠なものであった。それでも自衛隊では在日米軍が使用する武器・弾薬の相互運用性を確保するために、小銃のNATO弾を使用しているほか、兵器に様々なNATOとの共通規格を採用している。近年では、2005年にNATO事務総長が訪日、また2007年には時の首相・安倍晋三が欧州歴訪の一環としてNATO本部を訪問しており、人的交流の面でも新たな関係が構築され始めている。この時、安倍が来賓として演説を行った北大西洋理事会 では、それに続くNATO加盟各国の代表との会談の中で主要国が軒並み日本との緊密な協力関係を構築することに賛意を表したことが注目された。これ以降、NACの下部組織である政治委員会と自衛隊との非公式な協議が開催されたり、ローマにあるNATO国防大学の上級コースへ自衛官が留学するようになったり、NATOの災害派遣演習へ自衛官がオブザーバーとしての参加するようになったり、実務レベルでの提携も行われるようになったりした。 2014年5月6日にも、安倍が欧州歴訪の際にNATOのラスムセン事務総長と会談。海賊対策のためのNATOの訓練に自衛隊が参加することや国際平和協力活動に参加した経験を持つ日本政府の女性職員をNATO本部に派遣することなどで合意。さらに日本とNATOとの間で具体的な協力項目を掲げた「国別パートナーシップ協力計画」(IPCP)に署名した。
またNATOはアフガニスタンにおける活動の中で、現地の日本大使館が行っている人道支援や復興活動に注目しており、軍閥の武装解除を進める武装解除・動員解除・社会復帰プログラムの指導者的立場にある日本との連携を模索している。
さらには、日本をNATOに加盟させようとする動きもある。これはNATOを北大西洋地域に限定せずに世界規模の機構に発展させた上で、日本のほかオーストラリア、シンガポール、インド、イスラエルを加盟させるべきだという意見である。ルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長、ブルッキングス研究所のアイボ・ダールダーシニアフェローなどが提唱している。
2018年5月、北大西洋理事会は、ブリュッセルの在ベルギー日本大使館にNATO日本政府代表部を開設することに同意[18]。2018年7月1日、NATO日本政府代表部を開設した。
2008年10月時点、日本政府はアフガニスタンで国際治安支援部隊(ISAF)を展開するNATOに対し財政支援を行っており、NATO・ISAF側は広報センターを通じてこの事実をファクトシートの形で公表している。日本の対NATO協力の変遷は次のとおり。
2007年1月、安倍首相が北大西洋理事会で演説。
2007年3月、アフガニスタンでの人道支援プロジェクトのために約20億円の財政支援を実施。
2007年12月、NATO文民代表部との連絡促進のため常勤の連絡調整員を指名。
2010年6月25日、「日・NATO情報保護協定」を締結(日本が情報保護協定を結ぶのは、「日米軍事情報包括保護協定」(2007年にアメリカとの間で締結)に次ぎ2例目である)。
NATOのアフガニスタンでの活動に対する日本の財政支援は、政府の「草の根無償・人間の安全保障資金協力 (GAGP) スキーム」の範囲内で行われている。2008年10月2日時点で、日本政府はGAGPの方針に従い29のプロジェクト支援を実施しており、その総額はおよそ260万ドルに及んでいる。NATOによれば、政府はさらに39のプロジェクトへの追加資金協力を検討しているという。